星夢物語
そこにはおじいちゃんとおばあちゃんが2人、ゆったりとした和風の座椅子に座っている。
そして写真でみたことのある幼い母が1人、その座椅子の近くで2人の顔を覗きながら、満面の笑みで右手の二の腕下あたりを、左手でつかんでいた。

「偉いね」「よく書けたね」と褒める両親。

その2人の手の中には1冊の本。

「星の夢」というタイトルで、2~3ページぐらいだろうか
可愛らしい絵も添えられ、幼い子供が作ったにしてはよく出来たものだった。
内容を読もうとするがところどころでノイズが走り思うように読み取れない。


「もうっ、おじいちゃんしっかり。。断片しか読み取れないじゃない」


内容の断片を拾い集め、なんとか単語程度ではあるが、それをつかみ読むことに成功した。


…が裏山へ・に緑の葉・光の・・・・・・


「なんだろう・・・、、裏山?」



この家の裏には天子山と呼ばれる場所が存在する。
頂上まで登るのにはそんなに時間はかからず、おそらく5分もあれば行けるのではないか?という程度の茶色の山だ。
実際に登った経験はないが、目視でそう見えるほどの距離感なのだ。
以前におばあちゃんからその山の話を聞いたことがあり、上まで登ると町を一望できる、波根町内のお勧めポイントなのだそうだ。


そうこう考えている間に夢全体が灰色に変わり始めてきた。
杏恋の経験上、対象者の夢が終わる前になるとこういった現象が必ず起こり、灰色から黒に変わる前にやめないと強い頭痛に襲われるのだ。


「まずいーーー!解除しなきゃっ」


急いで夢見をやめ、自分の体へ意識を戻し呼吸を整えた。
おじいちゃんはゆっくりと目を覚まし、何故か近くにいる杏恋のことを不思議そうに思いながら状態を起こした。

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