白日夢
陣が熱弁を振るうと和久井は眉間にしわを寄せて、反論した。
「では君は難解な作品を作る映像作家は皆評論家に褒められたいから、作為的にそうしてると言うんだね。」
「全部がそうとは言わないが多くはそうだと思う。少なくともドゴール以降はね。」
「ドゴールも?」
 和久井の問いに陣は頷いて答えた。しばらくの間、及川は黙りこんだ。
「君がドゴール否定論者だとは思わなかったな。ううん、どうするべきか。」
 和久井は急に口を開いたと思うと又、考えるような首を擡げたポーズで沈黙した。
「何をそんなに考え込んでいるんだ。」
陣が聞くと和久井は、ううんとまた唸ってから、いった。
「いや、ドゴールのマネージャからパーティに招かれたんだ。」
「それが俺に何の関係がある?」
 陣が言うと、和久井は顔をあげると神妙に言った。
「いや、ね。君も誘おうと思ってさ。」
「俺も?」
陣は自分の人差し指で自身を指した。
「どうする?もし、否ならほかの・・・。」
「行く。絶対行く。」
 陣は和久井が言い終わらない内に興奮したように、顔を真っ赤にして答えた。
「ああ、そう。」和久井は呆れて様に頷いて言った。「着ていくものはあるのかい?まさかその格好で行くんじゃないだろうね。」
「え、勿論この格好で・・・。」
 和久井は、パーティ日時の八日までにちゃんとした服装を出来るようにしておいてくれと言い残し、田口探偵事務所を後にした。
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