藍色の城
『昊(コウ)、こちら河島咲妃さん。』
『で、咲妃。俺の弟の昊ね。』
互いに紹介された時に見た
影のある瞳。
『ども』ってそれだけ。
牛乳を飲んでる時点で子供だなって
思ったけど、
ジッと見つめられた一瞬は
不覚にもドキッとした。
眼鏡の奥にまだあるあどけなさ
とは裏腹に、
澄んだ瞳と絡み合う視線。
純情で爽やかだけど、
どこか影のある瞳をちらつかせ
キミは部屋に戻って行った。
この一瞬で、確実に、
私の心に爪痕を残しながら。
『咲妃…!?どした!?』
陽の問いかけにハッとする。
『ううん、何でもない。』
笑顔で答えて陽と指を絡ませる。
平気なフリして私は、
陽の恋人として寄り添った。
暑い、暑い夏の始まりだった───。