藍色の城



久しぶりに訪れた谷原宅。



相変わらず笑顔の優しい
陽のお母さん。
そして、リビングから
聞こえるキミと女の子の声。



一瞬目の合った私たち。
でもキミから目をそらした。



そうだよね…。
ううん、それでいい。



『合格おめでとうー!!』
それぞれのグラスで乾杯して
美味しい料理を口に運ぶ。



チラチラと感じる視線を無視して
気丈に振る舞う私は陽だけの彼女。



陽だけを見て、微笑んでるの。



悪い女を簡単に演じれてる自分に
一番驚いているけど、
そうするしか道はなかったんだよ…。



何もかも、自分の手で失った瞬間。
私は陽を選んで、キミを捨てた瞬間。
キミも私を忘れて、
嫌いになった瞬間なの……。



ただそれを、見てることしか
出来ない二人……。



決して言わない口にしない。
それが二人の交わした約束だから。











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