ラブファクトリー
一人を残して、あの時のメンバーが集まった。
僕は密かに落胆していた。
初恋のあの子が、現れなかったからだ。
「あのね」
唐突に、一人の女の子が声を上げた。
クラスでリーダーを努めていた、長田さんだった。
「皆に大事な話があるの。実は、今来てないメンバー。皆も覚えてるよね?
野波紗弥加。あの子ね、去年亡くなったの」
しん、と一瞬にして沈黙が訪れた。
誰も言葉を発しない。
ただ、動揺だけが空気で伝わってきていた。
「……どうして?」
小さな声が上がる。
「病気。癌、だったんだって」
戸惑い、そして、それは悲しみに変わった。
まさか、あの子が。
涙こそ出ないけど、僕は今すぐ引き返して走りだしたかった。