BE MY ANGEL
12月になった。


空気が澄んで刺すように冷たくなった。


美姫が未来に帰還するまで1ヶ月を切った。


美姫が未来に帰る頃には、この東京にも雪が降るだろう。


美姫が一緒に暮らしている“人間”は、麻生和久と敬子と言った。


「お父さんとお母さんはこの時代に残りたい?」


不自然にならないように美姫は記憶が戻った今も、赤の他人の人間をお父さん、お母さんと呼んでいた。


今までお世話になった義理もあるのだろう。


「いいえ、トーリ様。この時代はとても快適ですが、私共にはこの時代の話を皆に聞かせる役目があります。皆私達が帰ってくるのを心待ちにしておりますので・・・」


と和久が言った。


「その代わり嗜好品の作り方をノートに書いたんです。未来では質素な物しか食べることが出来ないので、こういった物があると楽しみがあるかと」


そう言って敬子が美姫に一冊のノートを見せてくれた。
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