ディア・ロマンス




それでも、私の視線は視界を無遠慮に独占するそれから離せないでいた。


赤に近い焦げ茶色の髪は無造作にセットされていて、気怠げな足取りでゆっくり歩む姿。身長も大きい彼は間違えるはずもない、昨日のコンビニで助けてくれた男。



私は、ゆっくりと2人の間を通り抜けて何故か分からないけど引き寄せられるように彼へと近寄って行った。




「あの。」



別に、びびって声が尻すぼみになってしまうことはなかった。

第一話したこともない人を怖いなんて思わないし(まあ、すかした奴だとは思ったけど。)


男は俯いていた視線を、威嚇するように持ち上げるとその瞳に私を映した。





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