ディア・ロマンス




「……誰。」


その声からは本当に私が誰か分かっていないようで。



「…コンビニのバイト店員です。」


そう呟けば、男は少し沈黙を設け再度私を見つめると「ああ」と、どうやら思い出したらしい。



私が男に声をかけたのは、多分昨日のお礼を言うためだと思う。なんか、自分でも良く分からないけど多分そう。


男は私の足下から上へかけて舐めるように見て視線を上げると。



「で、なに?」


口角を(何故か)楽しげに持ち上げながら腰を屈め私の顔を覗き込んできた。


突拍子もなく顔を近付けてくるもんだから、思わず訝しげに眉根を寄せ嫌悪感を露わにしてしまう私。





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