ディア・ロマンス
昨日のお礼をと言葉にすれば、目の前に男は更に楽しそうに口角を引き上げたのだ。
それには私もさらに不審なものでも見るよう、睨みつけてしまった。
「…昨日は、どうも。」
「どういたしまして?」
「……それじゃあ、」
にっと笑う男から視線を逸らし踵を返し立ち去ろうとした―――――――――…はずだったが。
何故だろうか、私はその場から動けずにいた。
理由なんて簡単で、これも解せない。私の手首は男にしっかり掴まれているから。
「は?」
完璧、声に出した挑発まがいなそれは勿論男の行動に向けられたもの。