ディア・ロマンス
「名前教えろよ。」
そう言うなり口元を歪めた男。あれ、デジャビュ?いやいやこれじゃ昨日と一緒じゃないか。
助けてくれた人がそれやってるってどうなの。
「あの、離して下さい。」
「だったら名前言えよ。」
「ありません。」
「つくならもっとマシな嘘つけ。」
それは尤もだけど、取りあえず今はこの状況から逃れたい。打開策はないかと必死に頭を回転させるが、思い浮かぶわけもなく。
面倒になった私は「名前言ったら離してくれますか」と、まさしく昨日の男達へ言ったのと等しいような言葉を口にしていた。
だって、本当にこういうのは面倒。