ディア・ロマンス
romance3
「はよー。」
「………は?」
目の前の光景は、夢か。はたまた悪夢か。いや分かってるよこれが現実だってことくらい分かってるよただちょっと現実逃避したかっただけ。
てか、さ…。
「(どうして、)」
家の前に、この男がいるんだ。
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―――――――…
―――――…
「玲、さっさと起きろ。」
「……ん…。」
1時間前、まだ私の意識は夢の中。それを引き戻す声は、聞き覚えのある低いそれで。
薄目を開き確認すれば、私に良く似た少し切れ長の鋭い目が私を見下ろしていた。
「……何時。」
「7時。いっつもそれ聞かなくても、その時間以外にお前起こさねーだろ。」
「ん、ごめん。」
「まあいいけど。さっさと着替えて降りてこい。母さんもう出たぞ。」
そう言い残し、踵を返して私の部屋を出ていく後ろ姿をまだ覚醒しきっていない頭でぼーっと見つめていた。