ディア・ロマンス
と。
くるりと振り返った長身の男は、少し襟足の長い綺麗なブラウンの髪を乱しながら小さく欠伸をする。
「お前ね、いい加減自分で起きれるようになれよな。」
「それが無理だから、頼んでんじゃん。」
「努力しろ努力。」
「した。3限目まで寝過ごした大遅刻。」
「先が思いやられる。」
「…まあ、頑張るけど。」
そう呟き俯いた私の頭に、のせられた優しい重さはこれまた良く知った手の大きさ。
この手は、安心する。
期待してる、と意地悪く笑ったその男をゆるく睨み上げるが。遅刻するぞ、と笑われただけで部屋から出ていった。
……確かに、もう高校生なんだ。自分で起きれるようにならなきゃ、なあ。
ふう、と息を吐きだして冷たく冷えたフローリングの床に足を降ろせば。ヒヤリとした冷たさが足裏を伝った。
こういうのも、私が朝が苦手な原因の一つでもある。
布団の温かさは手放しがたいものだ。