ディア・ロマンス
「明日だっけ?サークルの旅行。」
「あー…まあ、そうだったんだけどさ。」
「うん?」
「スキーなんて、雪山だろ。俺寒いのとか無理だからパスした。」
あんたそれ゙旅行サークル゙たるものに入っている奴が言う言葉か、と呆れたが口にはしなかった。
数分後、リビングに甘い香りが広がる。あれ?なんて思いながら啓兄を見ていれば私専用のマグを片手にこちらへ歩み寄る。
ことり、私の前に置かれたマグの中に揺れるのは。琥珀色のそれではなく、ミルクティーよりは濃いが優しい色だった。
「(…カフェオレ。)」
珈琲以外認めないとか言ってたくせに、啓兄は優しい。
「それ飲んでさっさと準備しろ。」
「うん、ありがと。」
「朝飯はー…」
「いらない。」
「晩は母さんいないから、玲がバイトないならどっか食いに行こ。」
そう言って小さく微笑み携帯を開く啓兄に「りょーかい」と呟きカフェオレを喉に流す。