ディア・ロマンス
「ふーう、大丈夫だったー?」
へらりと笑いながら私を見下ろす三笠さんに、ぺこりと頭を下げてお礼を告げる。そこで、軽やかなメロディーが店内に響いて視線を向ければ、あの赤毛の男が店の外に出た音だった。
お礼、言いそびれてしまった…。
この時私は、今すぐ追いかけてお礼を言うことは出来たけど追わなかった。理由は、まあまた会ったらでいっかと思ったから。
私はただ薄暗くなり始めた外の色へと身を投じた男の後ろ姿を見つめていた。
まあ、あれだ。
面倒事(借りがあること)のお返しなんてものは、その場でしとけってことを、私は身を持って思い知る。
さて、滅茶苦茶な恋の
幕が上がった。