空色新聞社 〜アイを叫ぶ15のボクら〜





夜風がざわざわと騒いで
空の雲間に月

丸太で出来た電柱
光の周りに、虫が集まる





門に、あかり ――――


玄関の引き戸を開くと
明るいアイちゃんの
「お帰りなさい!」の声





居間にいるマサルさんは
お手製の鰹節削りを持参

小さくなったカツオを
新聞紙をしいた上で
手際よくけずっている





今日は そうめん

… 夏の定番だというのに
すごく、久しぶりだ


あとは、なっ葉のおひたし
それと、何か揚げている音が
笑い声と一緒に、奥からしてる





「 おかえり ハザマさん 」



「 ただいま

――… ユウくんも、お帰りなさい 」





ニコリと笑い
戻した視線の先にはテレビ
古い時代の、ホームドラマがやってる





ユウくんはのんびり畳に
足を拡げて見ていて

たまに味見をさせに来る
エプロン姿のアイちゃんの指から
揚げたてのエビをもらうと
「 美味い 」と微笑み、頬にキスした



アイちゃんは、真っ赤な顔で笑って
ますます張り切った様子で
腕まくりしながら、台所に戻る





ぐしゃぐしゃになった服を
風呂場で着替える



―――― 風呂が、沸いてた







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