夢幻双子
【葛木】
葛木は途中で気づいていた。
あの女、不機嫌そうに顔を歪めていたが、あれは確かに滝に打たれていた美女をであった。
真星か…。
美しい名だ。
真星が言っていたことは胡散臭かったが、信じるしかないようだ。
そうでなければ、あんな花畑にいるはずもなかった。
ましてやあの真星とかいう女に会うことも。
葛木は傭兵だ。
戦場か護衛としてしか用はない。
特に花などには無縁だし、最近は死体かむさ苦しい男にしかお目にかかっちゃいない
もしかしたらあの女自体葛木が作り出した想像物かもしれないと思うと、自分も甘ちゃんになったもんだと笑えた。
休憩中とはいえ戦場であんな夢を見るなんて。
早く戦いが終わりになればいいとか柄にもなく思っちまった。
戦が終われば仕事が無くなる。
そうすれば俺のような奴は取り締まられて殺されるのが相場だというのに
またあの女には会うだろうか。
いや、絶対会うだろう
なぜかそんな予感がした。