夢幻双子
「俺は…何て?」
「‥真星」
真赫は苦々しげに答えた。
「はっ…」
葛木は自嘲気味に笑う。
白昼夢のような場所で会った、現実にいるかもわからない女の名を呼ぶなんて。
でも、それで思い出した。
「お前、真星じゃないのか?」
川岸で会った女の顔。
真星かと…
「否。お前とその真星とやら、一体どんな関係だった?」
「どんな関係って奴でもねぇ。ただ夢で会ったんだ。綺麗な女だった。また会おうと言った。」
葛木は押し黙る。
真赫は何もいわなかった。
「おかしいだろう?夢で会った女なんて。実際、天の迎えかと思ったぜ。」
「…なぜそんな美しい女と…私を間違えた?」
葛木は長い髪で覆われた真赫の顔を見透かすように見つめた。
「何でだろうなぁ?全然似ていないのに」
「そうだ。似ているはずもない。」
「でもお前、会ったときは顔が隠れていなかったんじゃ…髪をあげれば-」