春となりを待つきみへ
「そういえばハルカ、ずっとこれの写真見てたもんね」
「うん、いつかほしいって思ってたんだ」
でも、俺がひとりで持ってたら、ぜったいコハルも欲しいって言うだろ。
春霞が笑うから、そんなことはない、と言い返そうとして、でもそんなことなくはないなと思い直す。
確かに春霞が持っていたら、わたしも欲しいと駄々を捏ねたはずだ。
「だからさ、誕生日プレゼントに、一緒に買って渡そうと思ったんだ」
「だったら言ってくれれば、わたしがハルカの分のペンダント買ったのに」
「まあ、それとは別でコハルからのプレゼントも欲しかったし」
春霞がベッドに置いていたわたしからのバッグをポンと叩く。
さすがにひたすら悩んだ末に決めたものだっただけあって、春霞も気に入ってくれたらしい。
気に入らないなんて言ったら殴るつもりだったけど。
「大事に使ってね」
「うん。でもこれ結構高そうだね」
「結構どころじゃないくらい高かったよ。奮発した」
いくらだった、と金額を言うと、春霞が目を丸くする。
そして視線を泳がせてから小さく笑うと「ごめん」とわたしに目を向けた。
「え……まさかこれ、もっと安かった?」
「うん……かなり」
「ずるい! わたしお年玉ほとんど使ったのに!」
「まあまあ、こういうのは金額じゃなくて、気持ちでしょ?」
「ぐぬぅ……」
確かにわたしが買いたくて買ったわけだし、いつも金額なんて決めていないから文句の言いようもないわけで。
よし、だったら仕方がないから今年は譲って、来年は春霞に奮発してもらうことにしよう、そう決める。
そのわたしの心の決意を見抜いていたのか、春霞はわたしを見ながら、薄く苦笑いを浮かべていた。