春となりを待つきみへ
「……冬眞は、どうしてそれ、持ってるの?」
随分端折った言い方だったかもしれない。
だけど冬眞には伝わったらしい。
「瑚春のご両親がくれたんだ。もちろん、直接じゃないけど」
モッズコートの中から取り出された、長いチェーンにぶら下がったそれ。
わたしの首から下がっているものと同じような形の、ガーネットの欠片。
「いつだったかな。コーディネーターさんから話があってね。俺に心臓をくれた人がずっと大事にしてたものを、俺に持っていてほしいって、ご家族の方から連絡があったって。
本当はこういうのって禁止されてるんだよね? でもね、俺も持っていたいと思ったから、お願いしますって、内緒で譲ってもらったんだ。
今は俺も、これがすごく大事な宝物」
瑚春も持ってたときはびっくりしたけど。
冬眞はそう言って、小さく笑う。
「でも、瑚春の胸元のこれを見つけたときに確信したんだ。俺の胸に居る人が探している人は、やっぱり瑚春だったんだって」
ハルカが死んだあの日から、わたしはハルカのペンダントがどこにあるかを知らなくて、なんとなく勝手に、両親が保管しているものと思っていた。
だけど、父も母も、もっと大切にしてくれる人へ、本当に、在るべき場所へ、ちゃんと戻してくれていたらしい。
「瑚春に、返した方がいい?」
「ううん。あんたが持ってて。たぶんその方がいい」
「わかった、ありがと。でもさ、素敵なご両親だね。本当に、瑚春のことも、春霞のことも、大切なんだ」
うん、そうなんだ。
わたしたちはとても大事に育てられた。
愛情をいっぱい貰っていた。
父も母も、誰よりもなによりも、わたしたちのことを想っていた。
そんなこと、ちゃんと、知っていたはずなのに。