春となりを待つきみへ
昨日の夜、なかなか寝付けなくて、だから布団にもぐりながら、冬眞が仕舞ってくれていた両親からの手紙を読んだ。
消印の古い順から、ぜんぶ。
38通あった手紙は、ほとんどは母が書いて、ときどき父の字もあった。
大抵が、便箋1枚程度の短いものだった。
大したことは書いてなかった。
ちょっとした会話みたいな、そんな何気ないことばかりだった。
両親は、誰にも何も言わず出て行ったわたしのことが心配で、無事だけでも確認しようと、居場所を探し出したらしい。
だけど、きっと会いに行くことをわたしは望んでいないから、わたしの元に行くことだけは我慢していたんだそうだ。
無事ならそれでいいと。
きっとまだ、笑って毎日を過ごせてはいないかもしれないけれど。
それでもいつかもう一度、前を向けるはずだから、そのときまで見守ろうと。
両親はあの町で、わたしのことを待っていた。
『一方的な手紙だけは許してね』
何通目かで、そう書かれていた。
会いには行かない。
手を貸さず、遠くから見守ると決めた。
だけど、伝えたいことがありすぎて、それはどうしても抑えられないから。
言葉に書いて、送ることだけは、どうか、許してと。