春となりを待つきみへ

まるで中学生の書いたものみたいな、丸みのある歪な文字に、自然と表情が緩む。

20代も後半のくせに、まだまだ随分子どもっぽいところのあるあんたらしい文字だな、と。

思ったこの言葉を、本人に言えば間髪入れずに怒り出すに違いない。

そんな拗ねたような怒り顔まで簡単に想像できて、なおさら可笑しくてひとりでひたすら笑っていた。


その手紙は、初めてもらったものじゃない。

もう、やりとりは何通か続いていた。


前に一度、突然会いに行ったことがあって、そしたらものすごく怒られたから、次は手紙で連絡してから行くことにした。

それがきっかけになって始まった往復だ。


最初に俺から手紙を出したとき、返事が返ってくるとは思っていなかった。

そのあと直接会いにだって行ったから返事を求めてはいなかったし、そもそも呆れた面倒くさがりだから、下手をすれば読んでさえくれていないんじゃないかと考えていたくらいだ。

だから返事が来たときは驚いた。それでいて、心底嬉しかった。


一番新しいこの手紙は、数日前に、ポストに入っていたものだ。

今回はいつもよりも返事が遅くて、まさか餓死でもしてるんじゃないかと心配したけれど、どうにか生きていたらしい、とりあえず安心だ。


封筒を開けて便箋を広げる。やっぱり子どもみたいな、丸みのある文字。

手紙は、俺が送ったものに比べると随分と短く味気のないもので、今回も毎度のことながら、便箋の半分にも満たないほどしか書かれていなかった。

でも、それでこそあんただ、と数行の手紙を眺めて思った。
< 313 / 321 >

この作品をシェア

pagetop