春となりを待つきみへ
時間の速さは一定ではないと、何かの本で読んだことがある。
生き物の体の大きさによって心臓の鼓動の速さが違うように、見ている世界の速さも違ってくるという説だ。
いつ頃読んだのか、なんで読んだのか、ついでに言えばその本の詳しい内容すらろくに覚えてはいない。
ただ、理論や計算など難しいことはわからないから、単純に面白い考えだとその文章を読んでいたのだけは薄っすらと記憶に残っている。
時間の速さは一定じゃない。
確かにそのとおりだ。
時計の針が時間を刻むスピードは変わらなくても、生き物が生きていくうえで感じる時間は常に不定。
ネズミの一生はあっという間に過ぎて、ゾウの一生は百年も続く。
だけどそれは、理論や計算などでは答えを出せないようなところででも、当てはまる事柄らしい。
だってもしも、体の大きさや心臓が鼓動を打つ速さで感じる時間が決まるのなら。
わたしの世界は、他の人たちみたいにちゃんと、動いていたっていいはずでしょう。