春となりを待つきみへ
近所のガキ大将にいじめられて悔しくて泣いた。
うんこを踏んでショックで泣いた。
きれいなお花を探して迷子になって寂しくて泣いた。
鉄棒で大技に失敗して思いっきり飛んで滑って擦りむいて泣いた。
そんなとき、いつもきみは言ったでしょう。
今はすごく悲しいことも、いつか思い出になれば、不思議と可笑しくなるもんだ、って。
いつか忘れた頃に、今日のことを俺に話してよ。
そしたら俺も思い出して、ふたりでお腹抱えて笑い合おう。
泣きじゃくりながらわたしは、笑えるわけねえだろって怒るんだけど。
不思議とそのうち思い出したら、ほんとにとんでもなくくだらないことだって可笑しくなって笑えた。
いじめられたこともうんこ踏んだことも迷子になったこともプチ英雄になったことも。
そのときはとんでもなく悔しくて衝撃的で悲しかったのに。
きみの言うとおり、そのうち楽しい思い出に変わってた。
ねえ、ハルカ、でもさ。
今はもう、その全部の思い出が、
泣けないくらいに、哀しくて、痛いよ。