秘密な彼氏
私、何やってるのよ。

何で元カノと喫茶店に入って、話をしようとしているのよ。

隆志よりも旦那を選んだって言う、恐ろしい女なのに。

「あまり、しゃべらないのね」

彼女が言った。

「――えっ、あっ…!」

いきなり話しかけられたものだから、私は戸惑った。

「私、沖津真未(オキツマミ)と申します」

彼女――沖津さんが丁寧に名乗った。

「――佐伯あやめです」

私は…ちゃんと、それも自然に名乗れていただろうか?

「隆志から私のことは何か?」

沖津さんが首を傾げて聞いてきた瞬間、私はうつむくように目をそらした。
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