春風が吹く頃
翌日、卒業式当日。
ハルにもらったフリージアの花束を抱え、登校する。
花束を見たクラスメイトや部員はこぞって椿をひやかす。
式が終わり教室に戻ってSHRが始まる。杏奈のところに行く時間が迫るにつれて、椿は落ち着かない気持ちになる。何度も時計を見て、先生に注意された。
SHRも終わり、花束を持って杏奈の教室へ駆ける。
走ったせいっで切らした息を整えて、深呼吸する。廊下から杏奈が教室内に居ることを確かめてから中に入っていく。
杏奈は友人に囲まれて談笑していた。
「杏奈先輩!」
呼べばこちらを向く。
「っ好きでした!」
そう言って、花束を前に差し出す。
「ありがとう」
杏奈は笑顔で受け取る。
「私も好きだよ。椿は最高な後輩だ」
杏奈の言葉に、椿も笑顔になる。
「安心しろ椿、杏奈は俺が幸せにするんだからな」
和志だ。いつの間に来ていたのか杏奈の横に立ち、椿を優しい目で見ている。
「もちろんです…それに、和志先輩も好きですよ」
「"も"ってなんだよ。俺はついでか?」
和志の言葉で笑いが湧く。教室は笑い声で包まれた。椿も、その中心で笑っている。
杏奈に別れを告げ椿は帰路につく。目に留まったのはやはり、ハルの店。
今日のことを報告しようと、足を向ける。