unrequited love
「大丈夫ですか?」

覚悟していた冷たい壁の感触ではなく、

私が頭を預けた先は

暖かいコタロウの胸だった。

「先輩、そんなとこにもたれ掛かったら

コブ出来ちゃいますよ? はい。今買ったお水どうぞ」

キャップを開け、私の手を取って

ペットボトルを持たせてくれた。

線が細いから気づかなかったけど、

コタロウは意外にがっしりとしていて

頼もしさを感じる肩。

私のアタマを擡げると丁度いい位置にあって楽になれた。

気持ちいい。

「先輩、これからどうするんですか?

今の感じだと帰れますか?

皆さん、すぐそこのカラオケですから

合流…」

「コタ!」

圭一さんがちょっと声をあげた。

「大丈夫だよ。鏑木は方面一緒だから途中まで

乗っけてくよ。コイツ、明日昼から学校あるらしいし

オールしたら単位ヤバいみたいだから」

コタロウはゆっくりと私の頭を壁に寄せて

「良かったです。

圭一さん、先輩を、宜しくお願いしますね。」

そう言って私に向き合って、ペットボトルの蓋を閉めた。

私にペットボトルを握らせながら、去り際に耳元で囁いた。


「僕の好きな人、分かっちゃいました?

あれ、例えじゃなくて本当のコトですから。

勿論、好きってコトも。」
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