ただ、それだけで
出逢い
友達の恋
その頃の私は、就職して1年が経とうとしていて、仕事にもすっかり慣れ、週に何回かの友達や同僚との遊びや飲み会をそれなりに楽しんではいたけれど、何か物足りなさを感じていて…。
それが何かと気づいたのは、高校からの親友のサエに話を聞いたからだった。
「直接会って、話したい事があるの」
と金曜日の夜に電話がかかってきたので、2人共予定のなかった月曜日の夜に会う事になった。
何の話だろう、と気になってはいたけれど、大変な話ならすぐに話してくれるはずだし、サエの口調にも差し迫った様子が感じられなかったので、月曜日までの楽しみにする事にした。
残業にならないように予定通りに仕事をこなし、定時になってから待ち合わせのイタリアレストランに向かった。
店に着くと、すでに席に着いているサエが見えた。
「お待たせ。かなり待った?」
つかつかとサエに近づき声をかけながら、サエの向かい側に座った。4人がけの席だったので隣にスプリングコートと荷物を置く。
「ううん。大丈夫」
笑顔で応えてくれるサエの様子に特に変わった様子は見られなくて、安堵のため息をかるく吐く。