ただ、それだけで
有無を言わせないミズホ先輩の行動に呆気にとられて呆然と立っていたけど、ハッと気づき慌てて先輩の後を追いかけた。
「ミズホ先輩、本当にいいんですか?」
「いいの、いいの。バカなヤツらばっかりだから、それなりに楽しめると思うわよ」
エレベーターに乗り込み、荷物を受け取りながら、人見知りな私の大きな不安と密かに憧れているミズホ先輩の友達に会えるという期待を乗せながら、エレベーターは一階へと沈んで行った。
***
会社と自宅の途中の駅で降りて、向かったお店は普通の居酒屋だった。
入った瞬間、タバコとお酒と料理の匂いが混じった独特の匂いに覆われた。
「今日の服はクリーニング行きだな」なんて思いながら、店員さんに案内されたミズホ先輩の後に続く。
「こちらです」
廊下奥の個室の前に着くと店員さんの言葉に「どうも」と返し、靴を脱いで、襖をガラッと開けたミズホ先輩に
「おっ!ミズホ、お疲れ~先に始めちゃってるよ」
とご機嫌そうな男の人の声がした。
「お疲れ~。ユイ、おいでー」
友達に声かけた後、振り返り手招きしてくれたので、「こんばんは」と、ひょこっと部屋を覗いた。