ただ、それだけで

サエからの電話を今か今かと家で待っていた私に届いたのは


「……ユイ…私…、リョウに振られちゃった」


声を震わせたサエの声だった。

「なんで!?」


と言う私の言葉に


「リョウ…、私の事、友達としか見れないんだって」


震える声を抑えながら言葉を紡ぐサエに私は「そっか…」としか言えなかった。


2人と友達である私は、どっちの気持ちも分かり過ぎて簡単に言葉にできなかった。

リョウは友達としてサエを大事に思ってるからこそ、簡単な気持ちでつき合う訳にはいかなかったはず。


「でもね、失恋した事は思った以上に悲しくてつらいけど、気持ちを伝えられてスッキリしたの。だから後悔はしてないの…。ユイ、これで次の恋を見つけられるよ」


悲しそうな声で一生懸命前向きになろうとするサエが切なくて、涙が零れた。


そんなサエに彼氏ができたと言うのだ。

嬉しくない訳がない。



< 4 / 12 >

この作品をシェア

pagetop