ただ、それだけで
本当は乾杯してお祝いしたかったけど、サエはお酒が飲めないし、明日も仕事だからという事でいつもより早めに別れた。
きっと、帰ったら彼に電話するんだろうな。
幸せなサエの顔を思い出し、自然に頬が緩む。
そして、リョウにも教えてあげようと携帯を取り出し、メモリーから呼び出し電話をかけた。
サエの告白以来、リョウとサエの関係はちょっぴりぎこちなくなってしまった。表面上は変わらなかったけど、3人にしか分からない何かが変わってしまった。
サエの傷心とリョウの罪悪感。
だからこそ、今回の事はちゃんとリョウに知って欲しいと思った。
何回か呼び出し音が鳴った後、
「ユイ?」
リョウの声が聞こえてきた。