ただ、それだけで

先輩の友達


サエに会った次の日。

その日の仕事も無事に終わり、更衣室でメイクを直しながらサエの話を思い出し


「私もトキメキてみたいなぁ」

思わず呟いた。


昨日まではそんな事感じもしなかったのに、サエのピンクオーラの影響か自分が色あせているように感じる。

別に、恋愛だけが全てじゃないって事は百も承知だけれど、でも、やっぱり恋しているのとしていないのでは、世界が真逆のような気がする。

本気の恋愛ができない自分に焦ってるんだろうか?

やっぱりサエがうらやましい。

「さて、帰るか」

ため息を吐きながらロッカーを閉めた。


「なに~?そのため息」


振り向くと同じ部署のミズホ先輩が立っていた。


「ミズホ先輩、お疲れさまです」

「お疲れさま。で、どうしたのため息なんか吐いて」


「なんだかつまんないなぁって思って…」


まさか、"トキメキが欲しい"
なんて言う訳にもいかず、ごまかした。


「じゃあ、一緒に飲みに行く?今から友達と飲むんだけど、ユイちゃん連れて行ったらみんな大喜びしそう。大丈夫、気を遣うようなヤツらじゃないし」

「え!でも迷惑じゃ…」

「ないない。はい決定。はい行くよ」


そう言うと、ミズホ先輩は、私の荷物を手に更衣室を出て行った。



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