幻想館-眠り姫編-
もう幾度となく足を運んだ見慣れた病室の前。


二、三回ノックして中に入った。


ベッドの傍らに目をやると、男の人が立っていた。


如月さん・・・?


彼はお姉ちゃんの事をじっと見つめている。


声を掛けようと思った瞬間、如月さんとだぶって別の男性が見えた。


それは銀色の長い髪・・・


手をかざし、お姉ちゃんの額の上へ・・・


そして、淡い柔らかな光がさした次の瞬間、見知らぬ男性はスーッと消えていった。



えっ?

何、いまの?


時々、起きる不思議な現象・・・


私はそっと病室を出た。


この状態がいつまで続くのかな・・・?


私だって、色々とやりたい事はあるのに・・・・・・


あっ!


私・・・何でこんなこと思うんだろう?

お姉ちゃんの自殺を否定して真相を明らかにする為だったはず・・・・・・


「やあ!」

ふいに声をかけられた。


後ろを振り向く。


あっ・・・!


「連絡もしなくてすまなかったね」


一番最初に見せてくれた笑顔が、また戻ってきた。


「あの・・・捜査の方は進展してますか?」


「そうですね・・・ただ内容は教えられないので、申し訳ないのですが」


「未成年者保護って時には邪魔だと思いませんか?」


私の表情は急に変わった。

如月さんは困ったような顔をしていたがその後、フッと笑って言った。


「公表されて傷つくのはお姉さんも同じだと思いますよ」

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