幻想館-眠り姫編-
愛らしい笑顔と優しい心のお姫様。


城内はもとより、国中の人々がお姫様を一目みたいと、お城までの道のりは長い行列です。



「お姫様、今日もたくさんの人々が見えていますね」


年の近い侍女が、言いました。



んっ・・・?


この侍女って、私の妹にそっくりだわ!


さっきから、登場人物が顔見知りの人ばかり・・・どういう事なのかしら?



私には、たくさんの友人がいて、いつも中心的存在でいた。


楽しい毎日が続いていたはずだった・・・・


どうしてあんな事になってしまったの?



私は後悔なんてしていないのに・・・



何故、胸がこんなに傷むのかしら?



この物語のお姫様のように、疑う事を知らない私・・・だから




「どうかしましたか?」


館長さんは優しく言葉をかけてくれる。



「私、震えていますか?」


「それはあなた自身が、一番良くわかっているのではないですか?」



心の中を見透かされている。


でも、ダメ!


しっかりするのよ!


私は自分に言い聞かせた。



そして物語の続きをまた見始めた。




王様は毎日が、不安で仕方なかった。


次第に近づいてくる運命の年。


このまま成長が止まってくれたら・・・・・・


自分が出したおふれによって、民が生活に困り果て、城の者達も新しい服が着られなくなってしまった。


あの時に素直に謝っていれば・・・・


今となっては、取り返しのつかぬ事だった。
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