舞い散る桜
 一人残された私はあの帰りたくない家へ帰ろうとしていた。
        ドンッ!!

「きゃっ!ご、ごめんなさい。」
 余所見をしていた私は、男の人とぶつかってしまった。

「わ、わりぃ。怪我なかったか?」

「は、はい。」
 顔をあげて男の人の方を見る。同じクラスの蘇芳智樹(すおうともき)だ。

「す、蘇芳くんだよね。ありがと。」
 蘇芳くんはこの学園の留学生らしい。どこかの御曹司っていう噂がある。

「め、眼鏡…。」
 ぶつかった拍子に眼鏡を落としてしまった。

私は小学3年生から目が急激に悪くなってしまい、眼鏡がないと何も見えなかった。

「これか?」
 蘇芳くんが私の手の平にのせてくれた。

「あ、ありがとう。」

「…!」

「?…どうしたの?」

「いや…なんでもない。」
 蘇芳くんはそのまま去ってしまいました。

私は何のことか分からず、家へ…あの帰りたくない家へ帰ることにしました。

    これが、全ての始まりとは知らずに…



 



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