Foolish boyfriend~5年前の約束~

中村の毒舌は、確かに杏限定だ。基本中村は女の子に優しい、だからモテるんだろう。でもきっと杏への態度が中村の素。

女の子に優しい中村なんて、気持ち悪いもん。



「なーんか、舞子の彼氏と中村、仲良くなってるやん。初対面の時あんなに敵意むき出しやったのに」


「ね、あたしにもよく分からんわ。」



向井君とは違った、中村の性格。達哉はあんな性格だし、向井君ぐらいしかまとに話せる人、いないと思ってたんだけど予想外。


まさか中村と達哉が仲良くなるなんて。


「お前、名前は?」


「あぁ、中村大翔っちゅーねん。よろしくな」


「よろしく」


進んでいくにつれて、人が増えていく。はぐれないように達哉の手を握ったけど、これじゃ、いつ離れたっておかしくない。


「何やねん、めっさ人多いやん」


杏が心底めんどくさそうな顔をして呟く。


「ほんまやね。迷子になりそうや」


「はぐれんなよ」


達哉もめんどくさそうな顔をして言う。あたしの手をしっかりと握って、引き寄せた。一気に距離が縮まる。


「杏、お前はぐれんなや。俺絶対探せへんからな、迷子になったら終わりやで。見つからんくても俺は帰るぞ。」


「アホ、こっちのセリフや。中村、あんたこそ迷子になったら終わりやからね。そのままのたれ死んでしまえ。」


よく考えてみれば、喧嘩に発展するきっかけは毎回中村にあったりする。全く、ダメな男だよ、こいつは。

乗っちゃう杏も杏だけど。


「アホか、お前とはぐれても1人で帰れるっちゅーねん。」


確かに、帰れない距離じゃないけど。
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