Foolish boyfriend~5年前の約束~
「何やねん中村、死にたいんかな?」
「恐ろしいこと言うなや。」
「ん?死にたいんかな?」
「いやいや、だから…」
「死にたいんかな?」
「死にたくないです、はい。」
聞こえなかったことにしよう。うん、何も聞こえてないよ。大丈夫、杏のこと怖いだなんて、全然思ってないよ。
「花火、上がるんじゃね?」
「そうみたいだね」
2人のことは置いといて。
「あっちー…」
手でパタパタ扇いでいる達哉の額からは、汗が流れている。浴衣着てるあたしの方が暑いはずなのに、きっと達哉の方が汗かいてるし。
「汗かきすぎだよ」
「新陳代謝がいいんだって」
達哉の声と、大きな音が、重なった。
バーン!!!!
「あ、花火」
喧嘩をしていた杏と中村も顔を上げて花火を見る。
「俺、今初めて夏休みの気分味わったわ」
花火を見つめながらそう言う達哉。
夏休みなんて、結構前から始まってるのに。
「どういう意味?」
「7月中はバイトばっかりだったし。8月入っても、舞子いなかったから暇だったんだよ」
「何言ってんの、向井くんがいるじゃん」
「健吾もバイト始めたんだって。全然会ってねぇし。だから、こんな夏らしいことしたの、久しぶりなんだ」
向井くんがバイト…。そっか、向井くんがいなきゃ、達哉が暇になっちゃっても仕方ないね。