Foolish boyfriend~5年前の約束~
切り傷よりも浅くて、血も出てない。皮が少しむけているだけで、大した怪我じゃないんだけど…
「…どこかに引っかけたんだと思うよ、あたしも気がつかなかったし…」
そう言ってみるものの、全く信じていないようだ。嘘だって、完全にバレてる。
「嘘つくなよ、あの中学生だよな。俺、一発あいつ殴ってくる。」
冷めた目であたしの手首を見た後、クルリと元来た道を引き返していく。
冗談じゃない。
絶対に一発じゃ済まないんだから、行かせるわけにはいかない。
どうなるかは、少し考えればすぐに分かった。考えたくもなかったけれど。
「違うって…っ、あたしがどこかでぶつけたの…!あの中学生のせいじゃないから…っ」
必死の説得も、達哉には全く聞こえてないようだ。ジワリと、手のひらに汗が広がる。
ヤバい。
頭の中で、危険信号が鳴り響いている。ほんとにヤバい。どうすればいいんだ。
「達哉ってば! あたし先に帰っちゃうよ?寒いから早く帰りたいって言ったじゃん…!」
小走りで達哉を追いかけながら、後ろからそう言ってみたけど、やっぱり聞いてない。
「達哉…っ」
腕を引っ張ると、ようやく止まった。が、すぐに歩きだそうとしてしまう。