Foolish boyfriend~5年前の約束~
「もうっ、自分で怪我したって言ってるじゃん!達哉は絶対に一発じゃ済まないんだから!」
止まらない達哉を見て、大きな声で叫んだ。さすがに驚いたようで、クルリと振り返る。はぁー、とため息をついてあたしを見つめた。
「お前、嘘下手だよな」
達哉が鋭いんじゃなくて、あたしが嘘下手なの?え、違うでしょ。
まぁ、少し戸惑ったけど、そんなに下手じゃないよ。きっと。
「下手じゃないもん。…………じゃなくて、嘘じゃないもん。ほんとにぶつけただけ。」
そう言うと、達哉は少し笑ってあたしの方に歩いてきた。あ、いつもの達哉の顔だ。
「はいはい、もういいや。寒いし帰ろうぜ。」
手を繋いで、帰り道を歩き始めた。あたしはさっきから帰りたいって言ってたのに…
「うん。」
赤色だった空は、だんだんと藍色に染まってきていて、気温も下がってきていた。
「最近さ、お父さんの帰りが遅いんだ。まぁ、もとから遅かったんだけどね。」
「あぁ、前に転勤の話が出たときもそうだったよな。」
今日帰りに話そうと思っていたことだった。こんなに遅くなると思っていなかったから、計算違い。
「そうそう、前もこんな感じだった。前のは結局なくなっちゃったからよかったけど…」
前に転勤の話が出たときは、どうなるかと思ったけど結局その話はなくなったらしい。
達哉にもその話をしたけど、あまり気にする様子もなかった。