Foolish boyfriend~5年前の約束~
もし転勤することになれば、当然あたしは引っ越すし、転校もする。
そうなれば、達哉と別れることになるのかな?
達哉の反応からして、きっと引き留めるようなことはしないと思う。引っ越せば、そのままお別れかな…
「今回もなくなるんじゃねぇの? 前回みたいに。それに、まだ転勤って決まった訳じゃねぇだろ。」
そうだ、まだ決まったわけじゃない。もしかしたら、ただ忙しいだけなのかもしれない。
「そうだよねー、まだ決まってないし」
達哉があまり気にしてないように見えたから、あたしも気にしないようにする。
「まぁ、もしも転勤だったときは、一番に俺に言って。」
ヘラッと笑ってあたしの手を引いていく。能天気にも程があるでしょ…
でも、その方が楽でいい。何も考えてなさそうな達哉の方があたしは好きだ。
もしも計算高い男だったら、もっと厄介な男だったと思う。バカだから、付き合っていられる。喧嘩が強くてもバカだから、少し安心できる。
…自分の彼氏なのに失礼か。
「あ、舞子ん家お母さんいるんじゃねぇの? 電気点いてる。」
達哉が指さす方向には、明かりが点いたあたしの家がある。お母さん、帰ってるんだ。
「ほんとだ、お母さん帰ってるみたい」
気温が低いせいで、吐いた息が白い。達哉の家は逆方向だから、またここから帰らなきゃならないのに。
寒いだろうな…