Foolish boyfriend~5年前の約束~
「じゃあ、バイバイ」
家の前まで着いて、そう言ってみたものの、達哉はあたしの手を離さない。
「ちゅーしよっか」
急にグッと引き寄せられたかと思えば、突然言われた言葉は「ちゅーしよっか」だった。
え、急に何?
達哉が顔と顔の距離を少し寄せた。おでこがコツンとぶつかる。
達哉の顔がほんとに目の前にある。唇が、達哉のに触れてしまいそう。
「なぁ、ちゅーしていい?」
いつもは確認なんてしないくせに、今日は改まって聞いてくるなんて、変だ。
無駄に緊張しちゃうじゃない。
返事をする代わりに、コクンと頷いた。それを確認した達哉は、小さく微笑む。
「舞子かーわい」
その言葉と共に、フワリと香る達哉の匂いと、唇に柔らかい感触を感じた。
さっきまであたしの手を握っていた達哉の手は、いつのまにかあたしの頭に回っていた。
「ふっ…ん…」
ギュッと抱きしめられたまま、キスは続く。
手も、足も……体全体が冷え切っているにも関わらず、触れている唇だけが熱い。
長い長いキスに、酔ってしまいそうだ。唇の温度が心地いい。
苦しくなって、達哉の体を軽く押せば、唇はそっと離れた。