Foolish boyfriend~5年前の約束~
さっきまで暖かかった唇が、離れたことで急に冷えていく。
唇は離れたものの、顔と顔の距離は未だに近い。下からあたしの顔を覗き込む達哉。
「はは、顔真っ赤ー」
「うるさいなー」
達哉の体をグッと押して距離をとると、やっぱり急激に寒くなった。
「早く帰りなよ、今日寒いんだから」
マフラーも、手袋もしてない達哉がこれから家に帰るのかと思うと、申し訳ない。
わざわざ逆方向まで送ってくれなくても良かったのにな。
「おお、じゃあ帰る」
「あっ、ちょっと待って」
1人でこんな寒い中を帰るのは、あたしだったら絶対イヤだ。
たしか、今使ってるのとは別のマフラーが部屋にあったはず。今日は貸してあげよう。
ま、いっか。やっぱりあのマフラーは達哉にあげよう。もう使わないんだし。
部屋まで小走りで戻って、使っていないチェックのマフラーを掴んで外まで小走り。
ガチャリとドアを開ければ、達哉は壁により掛かって空を見上げていた。
ボーっと。
きっと、何も考えずに見上げてるんだろうけど、その達哉がいつものバカな達哉に見えなかったんだ。