Foolish boyfriend~5年前の約束~
「…達哉…?」
あたしが声をかければ、顔をパッと上げてこっちを見た。
「何だよ舞子、急に家に入るから何かあったのかと思った」
さっきの表情とは一変、いつものようにヘラヘラ笑う達哉の表情に戻った。
「あ、いや…マフラーあげようと思って。達哉冬でもマフラーしないし…あたしので良かったらあげる。」
さっきとってきたチェック柄のマフラーを、達哉の首に巻き付けると、嬉しそうに笑った。
「サンキュー、俺マフラー持ってないから助かった。」
そういえば、達哉の家は父子家庭だった。お母さんは、達哉が小さいときに病気で死んでしまったらしい。
お父さんの帰りが遅いことは頻繁にあるらしくて、夕食も1人の時の方が多い、そう言っていた。
「ねぇ達哉、ご飯食べてく?」
きっと今日も家に帰っても1人なんだろうな。そう思うと、自然と口が言ってしまった。
「え?」
あたし自身、驚いているんだけど、もっと驚いているのは達哉の方だ。
でも、送ってもらったお礼と言ってはなんだが、ご飯を食べていってほしい。
「いいじゃん、食べていきなよ」
「いや、いいよ。何か悪いし」
目をそらされた。遠慮してるんだ。そんな達哉の手を引いて引き留める。
「帰っても1人なんでしょ? だったらいいじゃん、ご飯は大勢で食べた方が美味しいよ」