Foolish boyfriend~5年前の約束~
「イヤ」
当然あたしも拒否するわけで、達哉の顔はさらに不機嫌になる。
でも、直接あたしを怒ったりすることはない。責めるのはいつもあたしじゃなくて、向井君や相手の男子だ。
「舞子、すぐに返すからさ」
少しだけふんわり笑った。いつもあたしに向ける、優しい笑顔だ、これは。
「あたしの携帯借りて何しようとしてるの? 神崎に連絡なんかしたら絶対に喧嘩になるんだからっ」
S高という時点で、神崎が不良だということはすぐに分かった。S高は、この辺で唯一の不良校だから。
うちの学校から一番近いところにある学校で、関わることが多い。S高には関わりたくないのが本音だが。
「喧嘩するに決まってんだろ。S高だぞ? 神崎ってやつもどうせ不良なんだからいいじゃん」
喧嘩することしか頭にないのだろうか。いつでも、売られた喧嘩は絶対に買う。
あたしがいても、だ。
「だから、この前言ったでしょ。そんなに喧嘩ばっかりしてたら、いつか怪我するよ。」
達哉ならあり得る。
いつか大きな怪我をしても、きっと懲りないんだろうから。
「それ、聞いた。前にも言ったけど、大丈夫だって。俺強いし。」
まぁ、確かに強い。それは認めざるを得ないだろう。
でも、あたしが言いたいのはそんなことじゃない。いくら言っても分かってもらえないが。