Foolish boyfriend~5年前の約束~
いつも昼休みに来るのは達哉だけなのに、今日は向井君がいた。その時点で、神崎の話だと気づけば良かった。
「達哉、広田の気持ちも分かってやれよ。彼氏に喧嘩してほしくないって思うのは当たり前だろ。」
向井君があたしと達哉の間に入って、少し怒り気味にそう言った。
「健吾には関係ねぇだろ。」
達哉も負けじと、向井君を睨みつけながらそう言う。中学からの友達だというのに、キツい口調。
早く昼休みが終わればいいのに、と思い、壁についていた時計をふと見た瞬間
―――――キーンコーンカーンコーン…
大きなチャイム音が教室内に響きわたった。次の授業が始まる前の、予鈴だ。
「あ、鳴った。」
思わずポツリと呟いた。ナイスタイミングなチャイム音。この時だけは、この予鈴がとても嬉しく感じた。
「チャイム鳴ったからあたし教室に戻るねっ。次移動教室だし!」
チャイムもいいタイミングで鳴ったのだが、移動教室だということも、嬉しく感じた。
「あっ、おい!」
達哉の呼び止める声を無視して、急いで空き教室から飛び出して、自分のクラスに走って戻る。
放課後まで、達哉に会わなければいいだけ。帰りにその話を出されても、はぐらかそう。