Foolish boyfriend~5年前の約束~
「俺はS高まで行くけど、一緒に行く?チャリあるし、行くなら乗せてってやるよ」
鞄を掴み、歩き出す向井君を追う。もちろん、あたしも行くつもりだ。
「あたしも行く」
「俺の後ろしかあいてないけど、達哉には言うなよ? 俺が怒られるし」
2人乗りのときの、後ろの荷台の話をしているんだろう。確かに、怒られるのは向井君だし。
「うん、分かった」
「じゃあ、ここで待ってて。チャリとってくる。」
一時間も前に、達哉はこの学校を出ている。6限目のことは、あたしはきちんと授業を受けてたから知らないけど。
だったらもう、きっとS高についているぐらいだろう。達哉、今日は歩きで学校来てたし。
自転車置き場はガヤガヤと騒がしくて、向井君の姿は人に隠れて見えなかった。
通り過ぎる友達の「バイバイ」と言う言葉に、軽く返事を返す。気になっているのは達哉のことだけだった。
「広田、行くぞ」
ハッとして前を見ると、自転車を持ってきた向井君が立っていた。
「あ、うん」
本来は荷物を置くための荷台にゆっくりと乗ると、向井君は勢いよく漕ぎ始めた。
今まで落ち着いているかのように見えた向井君が、少しだけ焦っているように見えた。
そうだよね。あの達哉を中学のときから見てきたんだもんね。どうなるか、一番分かってるはず。