Foolish boyfriend~5年前の約束~
まぁ、まだそうだと決まったわけじゃないし。達哉がそんなにずる賢いやつだなんて、思ってないけど。
向井君の自転車の鍵をポケットに入れて、さっき音がした校舎裏の方に歩き出す。
「何ー、あの子制服違う」
ザワザワと賑やかなS高。あたしが目立っているんだろうけど、うるさくてたまらない。
中にはあたしのことを指さしてる人までいた。それを見ないようにして、少し歩くスピードを速めた。
うちの学校とは違って、見た目が派手な人たちばっかり。
凄く居づらい場所なんだよね、S高って。文化祭のときもそうだったけど。
「はぁー…」
思わず溜め息が出る。注目されることには慣れていないから、この状況はかなり苦痛だ。
小走りで校舎裏まで近付くと、バキッと、何かをぶつけるような音が微かに聞こえてきた。
「達哉…?」
達哉じゃなかったらいいな、って、少しだけ期待を込めながら校舎裏を覗く。
そこには、見慣れた2人の姿。
あたしが探してた恋人は、目の奥が笑っていない笑顔で、男の人を何度も殴りつけていた。
「達哉!」
きっとあの殴られてる男の人が、神崎って人なんだろう。
顔は見えないけど、達哉が殴ってるんだから、間違いない。