Foolish boyfriend~5年前の約束~
-達哉side-
「何なんだよ、あの態度。お前見ただろ、広田の顔。泣きそうなの我慢してたじゃねぇか」
今日最後の授業が終わった今、俺は健吾に説教されている最中だった。座っている俺の前に、健吾が立っている。
「見たって、見たよ。俺のせいだって事も全部、俺が一番分かってんだよ。でもな、俺にだって事情ってもんが…」
ゴンッと音がして、健吾の拳が机に打ち付けられた。さすがの俺も驚いた。
「あ? お前に何の事情があんだよ。お前が今更、何考えて広田にあんな態度とってんだよ、達哉」
普段あまり怒らない健吾が、俺を睨みつけてそう言った。本気で怒っているみたいだ。
「俺言ったよな。お前が思ってるほど、広田はお前に理想なんて持ってねぇって。少し素が出たぐらいで嫌われたりしねぇよ、バーカ」
健吾がこんなことを言うのには、理由がある。中学から仲の良かった健吾だからこそ、分かっていること。
俺が、女には素を出せないことを、健吾は知っているから。
中学の時、初めて付き合った彼女に、少し優しくしただけで喜ばれた。"優しくしてれば嫌われないんだ"と思ったから、そうするのが当たり前になった。
その彼女に、少しキツく言ってしまったことがあった。そのとき彼女は、"達哉君は怒らないと思った"そう言った。その後すぐに、振られた。
何で、と考えてみたが、答えは明確。自分でもすぐに分かった。
俺が、素を見せたからだ。
「今までの女がお前を振ったのは、お前に理想を持ってたからだ。達哉は絶対に怒らなくて、優しい、って思われてたからだろ」