Foolish boyfriend~5年前の約束~
小走りで靴箱まで行くと、壁に寄りかかって待っている達哉がいた。
達哉が始めてあたしの家に来た日に見た、あのボーっとした表情。きっと、何かを考えてるんだろうな…
「達哉…」
小さく名前を呼びかければ、パッと顔を上げてこっちを見た。
「お、帰るか」
案外普通。もっと、動揺するのかと思ったのにな…。
よく見てみれば、達哉の首には見慣れたマフラー。あたしがこの間あげたものだった。あれ以来、つけてこなかったのに。
「ん…」
「え…?」
少し微笑みながら、あたしに手を差し出す達哉。一瞬何してんのか分かんなかったけど、きっと手を繋ぐということなんだろう。
この間まで当たり前だったのに、久しぶりすぎて動揺してしまった。
「あ、うん」
自分でもよく分からない返事をして、久しぶりに手を繋ぐ。ゴツゴツした、男の子の手だ。
「さっみぃなー…」
何、いつもと変わんないじゃん。今までの態度は何だったの? もしかして、なしにするつもり?