Foolish boyfriend~5年前の約束~

3人座れるくらいのベンチに、腰を下ろした。繋いでいた手が、スッと解ける。


「俺さ、彼女には常に優しくするのが当たり前だと思ってたんだ。……中学の時に初めて出来た彼女がさ、俺が優しくするとすげぇ喜んでくれて…」


思っていたよりもすぐに話し始めた達哉は、あたしの顔を見ることなく、遠くの方を見ていた。

「優しくしてれば嫌われねぇんだ、って思った。……でもやっぱ、付き合ってて喧嘩しねぇってのは無理なんだよなー…」


当たり前だよ。全く喧嘩しないカップルなんて、いないでしょ。

達哉だって、常に優しくするなんてこと、出来るはずがない。そんなの、ほんとの達哉じゃないでしょ?


「初めて喧嘩したとき、俺ちょっとキツく言っちゃったんだ。まぁ、それが原因でその日に振られたんだけど」


「え…?」


その彼女さんは、達哉が怒ったから振ったっていうの? そんな、ちょっとした理由で。


「それから付き合った女も、その次に付き合った女も、みんな同じ理由だったよ。"達哉君は怒らないと思ったのに"って」


いつも優しい達哉に惹かれた女の子だったから、そんな理由で達哉を振ったんだろう。

でも、あたしは違うよ。


「俺舞子とは別れたくないから、絶対怒らないようにしようって思ってたんだけど…」


あたしは、いつも優しい達哉を好きになったわけじゃない。キッカケなんて覚えていないけど、性格なんて付き合う前は全くしらなかったし。
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