Foolish boyfriend~5年前の約束~
「あぁ、話があるんだ。座りなさい」
あたしがお父さんの向かい側に座ると、お母さんがあたしの隣に座った。
「前にも1回出た話なんだが…」
その言葉を聞いた瞬間に、何となくその続きの言葉が分かってしまった。
聞きたくない。その続きは、聞きたくない。あたしが考えてることと、違えばいいのに。
「転勤が決まった」
鈍器で殴られたような感覚。心臓がバクバクと波打って、何も考えられなくなった。
「舞子ももう高校2年だからな、お父さんが1人で単身赴任しても構わない。舞子が自分で決めなさい。」
そんなこと言われたって、あたしには決められない。そんな重大なこと、あたしが決められる分けないじゃない。
「……いつ引っ越すの…?」
「1週間後だ。」
1週間後………クリスマスの次の日だ。
「ゆっくりでいい、お父さんはどっちでも構わないからな」
お父さんはそう言っているものの、表情は寂しそうだった。
一瞬、ついていこうか、なんて考えたけど、達哉の顔が頭をよぎった。仲直りしたばかりなのに、離れなくちゃならなくなる。
「さぁ、ご飯にしましょう」
お母さんの明るい声が、やけに耳に響いた。
明日、どんな顔で達哉に会えばいいんだろ…